南薩鉄道の保存車輛 再整備


新製さながらの姿。


・川口市青木町公園で展示されている京浜急行のデハ230形、ガラスが割られ塗装も剥がれ、修繕費見積もり約3千万円。市は車両の管理を続けるのは難しいと廃棄予定(※) (日本経済新聞 2016/07/08朝刊)

・さいたま市中央区役所にある9600型 (39685号機) 40年以上屋外で展示され老朽化が激しいため来週中にも解体作業が始まる。修繕には約5,000万円かかるが解体なら1,400万円で済むという(※) (日本経済新聞 2016/09/17朝刊)

  (※)デハ230は京浜急行電鉄株式会社が引き取り予定、39685号機は10月解体済み

保管・維持ままならず、歴史的車輛たちが次々と消えていくなか・・・・・、
こんなに美しく整備されて、大事に大事に保管されている。
ドイツ製2両と日本製1両の蒸気機関車、ディーゼル機関車2両、KATOのスイッチャ―とともに。   鹿児島交通 旧加世田駅 キハ103。



鹿児島交通の旧加世田駅には、4号蒸気機関車とDD1201ディーゼル機関車が公開展示されています。
両機関車ともに屋外展示であるため痛みが激しく、2012年から総合整備が行われました。

4号機の整備状況




4号機 “お色直し” 完了。 Beautiful
 


DD1201の整備


“お色直し” 完了



公開展示されている車輛は屋外展示の2輌のみですが、非公開に屋内で1号機関車・2号機関車・キハ103が保存されています。
屋外展示の4号機とDD1201の化粧直しから1年、車庫内に保管されている1号機、2号機、丸型気動車キハ103の整備が始まりました。







整備は2014年2月初旬から準備され、2月下旬にバス車庫内から曳き出されました。



火室直下に位置する灰箱のメンテナンス。
会社からの蒸気機関車運用停止指示は当日の朝、突然だったそうです。
現場では「さよなら」の準備もなく、通常運用から帰庫した状態で実質廃車となりました。
火室の清掃は行われたものの、灰箱については何もされませんでした。
今回落とされた石炭ガラと灰は2号機が最後に走った日、昭和30年代のものです。
腐食してしまったパイプは灰箱内で完全消火するための放水管です。


しばらく屋外展示してあった2号機は1号機と比べて外販の腐食が進んでいます。
補修は腐食部清掃後、防錆加工の施されている0.8mmの鉄板を半自動溶接機で仮止めし、
溶接部の凹凸をサンダーでならした後、パテを盛って仕上げます。


段差をパテで埋めているため、塗装してしまうと継ぎ接ぎはそれほど目立ちません。


あとは下回りと化粧塗装を残すのみ。


ドイツ色に塗り直された2号機。


おそらく開業当時はこの塗色で走っていたことでしょう。


2号機の整備は2014/06/06に終了しました。
当初、7月の中旬までバス車庫内には戻さないとされていましたが、予定変更してバックホーに押されて庫内に収められました。


1号機の整備は当初予定の7月上旬から1か月ほど延び、8月8日に完了しました。
2号機をバス車庫に収めたため、整備スペースに制約が生じたことと、
猛暑により集中整備が出来なかったためです。


続いて。DD1202の整備完了。
1号機同様、バス車庫内での制約数多の整備となりました。
完成後は間をおかず、防塵シートが掛けられました。

整備前、DD1202の運転席。
(事前申請に基づき職員立ち会いのもと、立ち入りおよび撮影しています)



KATOの10トン機も黒色に塗装変更されました。

KATOは南薩線への入線実績はありません。親会社の大株主である岩崎産業が1951(昭和26)年新製したもので、日豊本線の重富駅で作業1.6qの枕木工場への専用線スイッチャ―として使用されていた機関車です。専用線廃止後は鹿児島市谷山の関連施設に保管されていたところ、南薩鉄道記念館(初代)立ち上げと合わせて車輛展示館より旧万世線軌道敷き350m程を復活させた子供列車計画が持ち上がり、牽引機関車として鹿児島交通に譲られたものです。
加世田に移送されたものの、谷山での保存状態は悪く、日野製のエンジンも再起不能。
運転計画は撤回され、記念館にオマケのような存在で展示されました。
展示館閉鎖解体後も場所を移して、屋内保管されている強運な機関車です。
とはいうものの、外見は立派ですが現在のエンジンでは再起不能であり、整備すれば復活の可能もある1号機・DD1202・キハ103とは異なります。


丸型気動車 キハ103整備状況

バス車庫内で大切に保存されている丸型気動車・キハ103


車内の様子
(事前申請に基づき職員立ち会いのもと、立ち入りおよび撮影しています)


下回りの様子
(事前申請に基づき職員立ち会いのもと、立ち入りおよび撮影しています)


キハ103整備進行中





保存されている103の諸元ではありませんが、同丸型気動車101号のデータです。



@ 各種アクリル系塗料類 整備終了間際とあって何れの缶も残量僅少
A 前回塗装から20年強、雨に打たれたことは無いとはいえ、退色進行
B 前面ガラス部のマスキング処理
C マスキング完了
D 一度手塗りの後、ガン吹き塗装
E ガン吹き直後の前面サイド
F マスキング剥ぎ取り後
G サイドのガラス窓マスキング処理
H サイド面の手塗り
I サイド面のガン吹き



@ サイド面のガン吹き完了、ガラス部のマスキング剥ぎ取り 次は青帯のためのマスキング施工
A ドア部の青帯マスキング 陽が直接当たらない庫内とはいえ南国7月の作業は汗だく
B ローラーと筆により青帯の塗装
C サイド面の塗装完了
D 廃車後消されていた車体表記を今回復元 盛り上がり( “積 3” と盛り上がっているのが分かる) を忠実になぞる
E 車体表記完成


キハ103の車内は記念館の食堂として利用するために、床板は全て張り替えられ、同時に内燃動車のエンジン・変換機・プロペラ・逆転機・台車の仕組みが分かるように一部ガラス張りとなりました。クロスシートは全体の半分が撤去され、残されたシートも枠はオリジナルであるものの、シート(布)は接客用に張り替えられています。 (撤去のシート(枠)は今でも別所で保管されているそうです)

A B 1970(昭和45)年1月申請・同年3月許可、“水冷・4サイクル・8気筒・縦型・直列・ディーゼル”DMH17C(180HP)”載せ替え
C   同日エンジンとともに圧縮式変換機もTC2に変更
C D プロペラ軸(推進軸) 軸外周の鉄帯は“振れ止め” (走行中にプロペラシャフトや自在継手が破損し道床に接触して大事に至らぬように取り付けた“ささえ”のための部品)を装備
E   エンジンで造られた一定方向の回転動力を菱枠台車(アーチバー式台車)TR29に推進力として“方向・向き”を伝えるための逆転機
(逆転機とは、エンジンにより作られた回転力は変速機を通りプロペラ軸に伝えられるが、この回転方向は常に一方向である、故に車輌が前進・後退を行うためには回転方向を変えるための逆転機が必要となる、また逆転機は線路と平行に延びるプロペラ軸の回転力を線路と垂直に位置する車輪および車軸に向きを変えて伝えるための装置)


連結器カバーの紺色仕上げは未完了であるものの、上回りはほぼ整備完了状態の鹿児島交通(旧南薩鉄道)キハ103



現役の時よりも格段に美しい



ドイツ、 HANOMAG 社製造の1号機関車。
(事前申請に基づき職員立ち会いのもと、立ち入りおよび撮影しています)
 


同2号機関車
(事前申請に基づき職員立ち会いのもと、立ち入りおよび撮影しています)


庫内の様子
(事前申請に基づき職員立ち会いのもと、立ち入りおよび撮影しています)


連結器部分の紺色塗装を最後に、2016(平成28)年7月23日全車両整備完了。
コンプレッサーとの接続により、1号機の汽笛も復活。


永きにわたり、お疲れ様でした。


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2017/02/12
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