加世田駅開業当時、集落は駅から南方向に向けて竹田神社あたりまでと加世田川を越えた東側(川畑地区)にありました。 交通の要所としてヒト・モノが集まると駅東側は徐々に賑わい、やがて市街地となり、町並みは拡大して昔からの集落に接合し、一帯は駅を中心とした町へと発展していきます。
1931(昭和6)年3月10日に加世田〜枕崎間が延長されるまで、加世田駅は伊集院方面と薩摩大崎町(薩摩万世)に至る始発駅であり、直通列車のスイッチバック駅でもありました。広大な敷地に本社を有し、車庫、専用貨物ームを構え運輸管理・指令を担う拠点でした。
構内では車両の入換えがおこなわれ、発着線と留置線・車庫との連絡線として、すべての線路が収束する最奥に数十メートルの引上線が敷設されていたに違いありません。
写真の線路(本線)が、かつての引上げ線だったはずです。
大型の木造客車庫(検車庫)。
側面は採光のためにガラス窓が11列、上下2段で22枠造られています。下段の枠には防犯上の理由からか、これもまた木製の格子が付けられています。造られた時代がもう少し後ならば、金属サッシになっていたかもしれません。しかし、上部窓の多くが台風などを意識して随分と補強されているのに比して、側板とまったく同色にもかかわらず、ひとつとして欠けることなく格子本来の役目を保持し続けている様は、華奢な構造のように見えながらも、建物本体と同様の耐久性を持ち、交換前提の安普請でなかったことを示しています。
駅は集落手前の田を潰して建設されましたが、もともとの田には役牛や農機具を搬入するための道があり、ヒトの往来にも利用されていたはずです。
駅ができたことにより道が分断されてしまうと、必然的に駅構内の両端部には最短迂回路が造られたことでしょう。
この枕崎寄りの踏切は、そんな経緯で作られた小路が発展し、警報機が設置
(1933(昭和8)年ごろの記録写真では警報灯はないものの、警標と注意札ならびに遮断桿が確認できます)されるまでになったのではないかと想像します。
枕崎から来た列車の運転席から見える光景です(もちろん遮断機は下りているはずです) 標準レンズ(50ミリ)で撮影していますが、構内は広大でもう一方の伊集院サイドの踏切までの直線距離は440メートルほどあります(時速4kmでまっすぐ歩いても6分30秒くらいかかる距離です)
再び木造客車庫(検車庫)。
客車の保守業務を終え、2号・12号蒸気機関車やハフ・テフなど2軸手荷物緩急車の保管庫として利用されてからは滅多に扉を開けることも無く、現役時代そのままの姿で鉄道廃止まで残りました。
手が加えられたのは踏切の「遮断動作反応灯」
をぶら下げたことくらいでしょうか。
左奥に「THEA?ER」の文字。
THEATER → シアター → 映画館 (東映系)です。
鉄道廃止と同時期に廃館となったそうです。
鉄道の開通により町へと発展。
役所の出先機関も設けられ、薩摩半島の行政の中心地として1954(昭和29)年には市制が布かれ、名実共に薩摩半島の中核都市としての地位を確立。
商業も本町地区(現)を中心に商店が並び、賑わいます。
この踏切の通りは商店街より少し外れた場所にありましたが「本町上通り」と呼ばれ飲食関連が多く並ぶ区域として発展したようです。突き当たりの通りは「上ん町料理屋街」と呼ばれ右方には大正から戦中にかけて「柳月亭・若竹・錦波楼・開盛楼・曙・花月・笑和」といった料亭が立ち並び、近郊近在からも客を集めていました。鉄道が元気だった頃は、このあたりも随分と賑わっていたことでしょう。
“キンポー” ⇒ “金峰” ⇒ 焼酎の銘柄?
打鐘式(機械式)警報機。
今どきの踏切警報音は電子回路で作られてスピーカーから流されますが、むかしは警標の上(センターポールの最上部)に取り付けた鐘を
機械的に打って音を出していました。
電磁的な仕組みで打棒を振って鐘を打つ方式の場合は、電源OFFとともにピタリと打ち止めになりますが、モータを動力にして打棒を動かす方式では電源がOFFになってもモーターの惰性で間の抜けた打音が何打か続く警報機もあって、ローカル私鉄独特の雰囲気を界隈に醸し出していました。
残念ながらこの警報機が“余韻のあるタイプ”だったのかどうかは、今となっては分かりませんが懐かしいタイプであることは確かです。
自動車の通過に合わせて、若干金属音
「カチャン」の混じった「ゴトン・ゴトン」。タイヤの動きにあわせて踏み板がしなり、ガードレールの先端が上下に動く、年季の入った踏み板。
@ 角材を切り出して
A 削げ加工を施し
B 削げ色に塗装して
C ガードレールの先端を折り
D 両端を濃い目のベンガラ色にして
E 木工用ボンドで貼り付けして
F コースターフとサンドを少々ふりかけて
G できあがり
モデルでは市販の踏切板をはめ込んで誤魔化さないで、ちょっとした手間(プロセスこそ醍醐味?)でグッとリアリティーが増すはずです。